The Night in the Rainbow
- Where Without You (6:17)
- Hidden Sun (6:34)
- Lie (7:14)
- Grapes (5:06)
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Lyrics
Where Without You
明らかに違う 違う 良く見える 良く見える 戸惑いを隠す 隠す 良く見える 良く見える 良く見える 良く見える 全世界をここへ 捨て去った時よ 消えたのは 僕じゃない 僕じゃないよ 掌の向こう側を 覚えている 覚えている ※ 後年に"Without You"として日本語で書き直したバージョンのテキスト。
Hidden Sun
三日月の朝に 目を覚ます 揺らめく水面に 囚われた光 夢現際の世界 ぼやけた視界 束の間の知識を 焼け付く記憶を 太陽に向かう 雲の柱を ぼくは見た 虹色 灰色 灰色 虹色 重なる未来 重ねる その時 誰もが瞬きしていた その時 誰かが貫かれていた 太陽に向かう 雲の柱を ぼくは見た ※ 後年に日本語で書き直したバージョンのテキスト。
Lie
なんでって繰り返す日々は 大きな間違いだったんだろう 暗い通りを彷徨うふりだったの分かったよ 最近ほんの少しは君の事を分かったよ 何で痛いんだ 雪降る街 そこでどうしてたら今は そう云う風に割り切ったいつかよりは ひそやかに鍵をかけるよ 今ならば 曖昧で痛い… なんでってありきたりな問いは 絶えなくそこかしこに積もる 捉えては失う戸惑いの僕らは 少しだけ先の未来と過去ばっかり見ていた 目を覚ませよそれは太陽に向かう雲の柱 曖昧で痛い… そう云う風な答えでも嘘は嘘 ※ 後年に日本語で書き直したバージョンのテキスト。
Grapes
道行く人よ 静かな目で堪えている 溢れた砂の 中に見えた瞬きが 夜明けまでに 何処か遠くへ 行けば良い 一つの意図が 垂れる垂れる垂れる 夜明けまでに 何処か遠くへ 行けば良い 馴染みの過去は 終わりにする 夜明けまでに 何処か遠くへ 闇の中で 会えるならば それで良い ※ 後年に日本語で書き直したバージョンのテキスト。
Intro
otomの2005年1月1日リリースのEP『The Night in the Rainbow』。アコースティック主体の2ndアルバム『Voice Called From Within The Wall』(2004)以来となる作品で、リバース処理されたギターや重ねられたボーカルなど、後のotomを特徴づけるサウンドの要素がこの時期に固まり、方向性と輪郭が明確になった重要作である。 『Where Without You』『Hidden Sun』はその核となる楽曲で、『Grapes』は次作への扉となる一曲。また『Lie』を含む本作の全曲は、後にすべて日本語詞へと書き直され、シングルやEPとして新たに発表されている。
Note
本作『The Night in the Rainbow』に収められた4曲は、それぞれ異なる表情を持ちながらも、リバースギターや多重録音されたボーカル、ループするフレーズといった共通の語法によって結ばれている。『Where Without You』の緊張感ある密度、『Hidden Sun』の内側から広がっていくうねり、『Lie』の静けさと切実さ、そして『Grapes』の軽やかな浮遊感。それらはすべて、抑制と解放、静と動の間を往復しながら、一つの流れとしてこのEPを形作っている。 後年、それぞれの楽曲は別のかたちで再構築されていくことになるが、その原点には、2004年という時期に生まれたこれらの音と感触が、すでに明確な輪郭をもって刻み込まれている。
1. Where Without You
『Where Without You』は、2004年の秋から冬にかけて書かれた楽曲。太さを意識したショートリバースギターの強いコード感を軸に展開する、ミドルテンポの一曲。かすれたニュアンスのボーカルを幾重にも重ねたウィスパー気味の質感と、テンポディレイのかかったドラムフレーズが淡々と刻むリズムは、互いに対照を成しながら楽曲の緊張感を形作っている。 サビでは、テープフラッターのように揺らぐドローン状のギターが重なり合い、浮遊感を生み出す。そこにエディットされたループフレーズが加わることで、楽曲全体を包み込むような、隙間のないサウンドスケープが形作られていく。 背景にあるのは、my bloody valentineに象徴されるサウンドからの強い影響。当時はまだネットも一般的ではなく、彼らの使用機材や制作手法は多くが謎に包まれていた。そうした状況の中で、otomが’90年代から愛用してたリバースエフェクトをさらに突き詰め、試行錯誤を重ねることで、この曲ならではの音像が生み出されていった。
後年、2018年に『Without You』とタイトルを改め、日本語詞へ書き換えたうえで再構築され、シングルリリースされた。
2. Hidden Sun
『Hidden Sun』は、2004年の秋から冬にかけて作曲された楽曲。ローで太いベースと心音のように響くキック、そしてエレクトリックピアノのフレーズループを起点に展開する、ミッドテンポのエクスペリメンタル・ポップ作品。序盤は抑制されたトーンで静かに進行し、曲が進むにつれてサウンドは次第に荒さを帯び、後半ではより激しい表情へと変化していく。テープフラッターを思わせる揺らいだ質感から、エモーショナルに歪んだ音像まで、多様なギターフレーズが次々と加えられ、楽曲全体が押し広げられていく。幾重にもオーバーダビングされたボーカルはギターと溶け合うように配置され、メロディアスでローファイな質感の中に、シューゲイズ的な浮遊感と実験性を併せ持つ仕上がりとなっている。
後年の2016年には『Hidden Sun』、この原曲と共通する『とある一日に見た夢』を題材にした日本語詞へと書き換えられ、再構築されたうえでシングルリリースされた。
『Hidden Sun』は、現在に至るまで、『Without You』と並んで、otom自身がフェイバリットとして挙げる曲でもある。
3. Lie
『Lie』は、シンプルなギターストロークの曲ながら、要所に配した決めフレーズと強弱、緩急を重視した一曲。2004年の身を切るように寒い冬の日に作曲された。ある冬の日の出来事、時が過ぎて初めて気づく決裂の分岐点、そこに残る後悔や無力さを描いている。若さや無知ゆえに出口の見えない問いを抱え込み、その意地や幼さの結果として失われたものに向き合う歌でもある。 柔らかなトーンのエレクトリックピアノのフレーズとアコースティックギターのストローク、ボーカルとコーラスが同時進行し、終盤にはオルガンが空間を埋めていく構成。少ないコードの中でメロディを展開させていく手法は、otom初期作品に頻繁に見られるもので、一つのコード進行から最小にして最大の効果を引き出すことを狙っている。 この曲は『Hidden Sun』とも密接な関係を持つ楽曲である。ある日見た夢を歌った『Hidden Sun』の歌詞に現れる不安やメタファーがこの曲でも再び登場する。
後年の2021年にリリースされた、夏秋冬春の4つのイメージと4つの演奏スタイルで四季をアコースティックで表現したEP『Cycle』には、日本語詞へと書き換えられ、再構築されたものが収録されている。
4. Grapes
『Grapes』は、ショートリバースギターのループと軽やかなリズムを軸に展開する、浮遊感のあるミドルテンポのドリーム・ポップソング。かすれた質感のボーカルから静かに始まり、サビでは多重録音されたコーラスが一気に広がり、音場を満たしていく。ソロや要所では、リバースをかけたクリーンギターがさりげないアクセントとして加わり、楽曲に幻想的な奥行きを与えている。 歌詞は、アメリカ文学の巨匠ジョン・スタインベックによる『怒りの葡萄』の主人公、トム・ジョードをモチーフにしたもの。本作のラストを締める一曲であると同時に、次作EP『Ride on the Cloud』(2006)のオープニング曲『Life Will Work Well』へと繋がる、物語的な架け橋となる楽曲でもある。
後年の2017年に『Grapes』は、日本語詞へと書き換えられ、再構築されたうえでシングルリリースされた。
Outro
『The Night in the Rainbow』は、4曲それぞれが独立した表情を持ちながらも、ひとつの流れとして聴かれることを前提に作られたEP。リバースギターやループ、重なり合う声が少しずつ姿を変えながら、静けさからうねりへ、緊張から解放への移ろいに耳を傾けて貰いたいです。otomの初期作品を語る上では最重要作品とも言える一作。お楽しみください。
『The Night in the Rainbow』はBandcampで配信中。高音質版の購入も可能です。