Voice Called from Within the Wall

Voice Called from Within the Wall

Released
Type
Album
  • You (3:49)
  • Night Flight (4:16)
  • Faults (4:53)
  • Birth (5:57)
  • Touch (5:07)
  • Favorite Hurt (5:32)
  • Dice (5:47)
  • Sunshot (6:46)
  • Nude Alphabet (6:41)
  • Voice Called from Within the Wall (4:08)

Lyrics

You

※ 日本語で書き直したバージョンはいずれ。

Night Flight

Instrumental

Faults

※ 日本語で書き直したバージョンはいずれ。

Birth

Instrumental

Touch

気付いてしまって触れる
霞を抱き寄せる様に

見つけてしまって触れる
ほつれを引き剥がす様に

期待をしたい あなた方に
期待をしたい あなた方に
古びた普通の事

期待をしたい あなた方に
期待をしたい あなた方に
愛を見たい あの日のように
古びた普通の事

※ 後年に日本語で書き直したバージョンのテキスト。

Favorite Hurt

※ 日本語で書き直したバージョンはいずれ。

Dice

とりあえず毎日をそれなりに過ごしている
行きたありばったりで気がつけば藪の中

未だに飽きもせず同じことを続ける
行き止まりばっかりで気がつけば藪の中

大好きなんてあまり関係ないそうだ
今日みたいな日にはそれも関係ないようだ

余計なものばかり集めては捨てている
有り余り過ぎていて気がつけば藪の中

大好きなんてあまり関係ないそうだ
今日みたいな日にはそれも関係ないようだ

始まりとおしまいの温度差をあっさり
忘れてしまうならいつまでも藪の中
いつまでも藪の中
いつまでも藪の中

大好きなんてあまり関係ないそうだ
今日みたいな日にはそれも関係ないようだ
関係ないようだ
関係ないようだ

※ 後年に日本語で書き直したバージョンのテキスト。

Sunshot

Instrumental

Nude Alphabet

※ 日本語で書き直したバージョンはいずれ。

Voice Called from Within the Wall

※ 日本語で書き直したバージョンはいずれ。

Intro

2004年8月15日にリリースされたotomの2ndアルバム『Voice Called from Within the Wall』。音の手触りや間合いを重視した楽曲構造を軸に、アコースティックサウンドを中心として制作された作品。抑えられた音数の中に、ささやかな音響処理やグリッチノイズを実験的に織り交ぜ、穏やかに音の表情を変化させていく。 シンプルさを重視したサウンドメイクの中で、otomの内省的な一面がよりはっきりと描かれており、楽曲そのものの輪郭や空気感が前面に出ている。このアルバムの中心として据えた曲『Dice』では、アコースティックな響きと繊細なコーラスワークが印象的で、本作の方向性を象徴する一曲となっている。 本作は、2004年5月にリリースされたEP『Highlife』以降の流れの中で制作され、原点を見つめ直すような感覚と、新たな音の試みが静かに共存するアルバムとなった。

Note

本作『Voice Called from Within the Wall』に収められた10曲は、フォーキーな弾き語りからインストゥルメンタル、ポップソング、ドローン、クラブ的な感覚を取り入れた楽曲まで、静かな振れ幅を持ちながら構成されている。 それぞれの曲は独立した表情を持ちつつも、音数を抑えたアレンジや持続音、反復的なフレーズといった共通の手法によって緩やかにつながり、アルバム全体として一つの時間の流れを形作っている。 初期otomの作風が色濃く反映された楽曲群と、その後の展開を予感させる試みが同居する本作は、内省的な視点と実験的な感覚が自然に交差する地点を記録したアルバムでもある。

1. You

アルバムのオープニングを飾る『You』は、スライドギターとアコースティックギターを軸にしたスローテンポの楽曲。フォーキーな質感を土台に、スローコア的な間合いと余白を大切にしたサウンドが静かに広がっていく。 甘く鳴るスライドギターと、淡々と刻まれるアコースティックの響きが重なり合い、楽曲全体に穏やかな緊張感を与えている。展開を抑えた構成が、残響の際立つゆったりとした時間感覚を生み出しているのも特徴。 Mazzy StarやMojave 3を思わせる内省的で静かなムードをまとい、本作のトーンを提示する一曲として、アルバムの入り口に置かれている。

2. Night Flight

『Night Flight』は、アルバムの流れを静かに受け継ぐインストゥルメンタル曲。レイヤーされた煌めくようなアコースティックギターのフレーズが冒頭から終わりまで続き、楽曲全体の軸を形作っている。 そこに柔らかなエレクトリックギターのループ、ベース、心拍数がわずかに上がるようなキックのリズムが加わり、緩やかな推進力を生み出す。前景で鳴るのは深いリバーブのかかったエレクトリックギターのメインフレーズ。奥ではE-Bowの持続音フレーズが幾重にも重なり、終盤にかけて空間を満たすように広がっていく。 後年、本作は荒島晃宏監督による映画『Film Fetish』(2013)で、otomが全編を手がけたオリジナル・サウンドトラックの一曲として、再構築したアレンジのバージョンが収録された。

3. Faults

『Faults』は、リバースを交えたアコースティックギターのストロークと、シンプルなリズムから始まるポップソング。フラットな演奏を土台にしながら、動きのあるメロディアスなベースラインが楽曲の印象を大きく形作っている。そこにゲインを抑えたリードギターがさりげなく彩りを加え、全体のバランスを整えている。 若い二人の失敗を描いたボーカルに、心地よいコーラスが重なり、素朴で親密なムードが広がっていく。 このアルバムを遡ること数年、Galaxie 500のような、素朴ながら芯のある楽曲を作りたいという思いから生まれた一曲でもある。

4. Birth

『Birth』は、深いリバーブをまとったオルガンのようなギターフレーズのイントロから始まるインストゥルメンタル曲。やがてアコースティックギターのストロークが加わり、アンビエント的なトーンへと音の質感を変化させていく。 さらにギターが重ねられることで、音場は持続音的な響きに満たされ、束の間のアルペジオを挟んでサウンドは次第に激しさを増していく。終盤には再びイントロのフレーズへと回帰し、循環する構成が印象を残す。 数本のギタートラックと過剰なまでの残響のみで、高揚感のあるドローンサウンドを形にしようとした一曲である。

5. Touch

『Touch』は、ギターによる厚みのあるサウンドを意識して制作された楽曲。シンプルなコード進行を軸に、ライブ感を重視した小編成のアレンジを土台としながら、レイヤーされたギター、軽快さと重厚さを併せ持つドラム、ドライブ感のあるベースが重なっていく。 ボーカルとコーラスは、言葉のやり取りや距離感といったコミュニケーションのあり方を描き、楽曲に人間的な温度を与えている。逆回転で表現されたギターソロも、シンプルさやアコースティックなサウンドとotom的な実験性が同居する本作ならではの特徴のひとつ。 後年の2023年には、日本語詞へと改め、すべてのパートを再録音・再構成したバージョンがシングルとしてリリースされた。

6. Favorite Hurt

『Favorite Hurt』は、ムーディでポストパンク的な雰囲気をまとって始まる楽曲。固く引き締まったクリーントーンにトレモロをかけたギターのメロディが全体を貫き、楽曲の印象を強く決定づけている。ベースとドラムはあくまで控えめに配置され、音数を抑えたアンサンブルの中で、遠くからロングトーンへと変化したギターコードが静かに鳴り響く。前景と奥行きの対比が、曲全体に張り詰めた空気感を生み出している。 This Total Coilや、デヴィッド・リンチ監督の『Twin Peaks』(1990)の中で流れていそうな楽曲をイメージして制作された一曲でもある。

7. Dice

『Dice』は、本作のメイントラックに位置付けられる楽曲。三種類のギターにボーカルとコーラスを加えた編成で構成されている。 流れるようなアコースティックギターのアルペジオとフレーズは、10代の頃から親しんできた『Blackbird』などに代表される、ポール・マッカートニーのギタースタイルや、サイモン&ガーファンクルから強い影響を受けている。一方、ボーカルの合間に挿入されるエレクトリックギターのフレーズには、この頃に頻繁に聴いていたシカゴの音楽家デヴィッド・グラブスの影響が色濃く反映されている。 普段使用しているシングルコイル系のギターに加え、レスポールのハムバッカーによる太いトーンも用いられ、遊び心のあるフレージングが随所に見られる。さらに要所ではナイロン弦のクラシックギターが使われ、それらの音に包まれるように、テンションを抑えたボーカルと柔らかなコーラスが重なっていく。 後年の2021年には、EP『Cycle』に日本語詞へと変更し、多くの部分を再構築したバージョンが収録された。

8. Sunshot

『Sunshot』は、鐘のような響きを持つギターのループから始まるインストゥルメンタル曲。ノイズやエレクトリックピアノのループが徐々に加わり、それぞれが異なるリズムで進行しながら、重なったり離れたりを繰り返すことで、木漏れ日の隙間から差し込む太陽光のような印象を帯びた、自然界の動きを思わせる有機的な音の揺らぎを生み出している。その中を横切るように、ベースやギターのE-bowによるロングトーンが現れては消え、音の層に奥行きを与えていく。終盤では、新たなベースとギターがわずかに曲調を示唆しながら、静かにフェードアウトしていく。 このアルバムのジャケットイメージを象徴する楽曲でもある。

9. Nude Alphabet

『Nude Alphabet』は、ギターによるレイヤーや反復的な手法に、クラブ・ミュージック的な感覚を重ね合わせた楽曲。丸みを帯びたエレクトリックギターのクリーンなアルペジオから始まり、別のギターフレーズや逆回転、ループ音がレイヤーされることで、断片的だった音が徐々に循環し、リズムとして立ち上がっていく。 やがて、ミニマルなハウス・ミュージックを思わせるドラムビートと、ドローン的なギターストロークが加わり、推進力を帯びながら楽曲は大きく展開していく。深いディレイとリバーブに沈められたボーカルとコーラスは、ビートの上で揺らぐ音響の一部として機能する。 ベースのアルペジオによるブレイクを挟みつつ、再びビートとドローンが戻ることで、空間と身体感覚の両方を刺激する構成となっている。 ラストは、固く引き締まったクリーントーンにトレモロをかけたギターのメロディが前景に現れ、ギターという楽器そのものの存在感を強く残して幕を閉じる。 otom改名前に制作された『Alphabet』という楽曲の痕跡を残す一曲でもある。

10. Voice Called from Within the Wall

『Voice Called from Within the Wall』は、アルバムのタイトルを冠したラストトラック。トーンを絞ったレスポールの甘いクリーントーンで爪弾かれるギターフレーズと、静かに繰り返されるボーカルメロディを軸に、ごく控えめなコーラスが添えられている。 初期otomの大きな特徴でもある、「Aメロ的なフレーズのみで楽曲を展開させる」手法を用い、最小限の構成で楽曲の輪郭を際立たせている。 アコースティックサウンドを軸にした本作のテーマと、シンプルさを重視したサウンドメイクの中で、otomの内省的な側面が端的に表れた一曲である。

Outro

『Voice Called from Within the Wall』は、音を足すことよりも削ぐことを選び、その残響や揺らぎに耳を澄ませるためのアルバム。控えめな音の配置と淡い変化の積み重ねが、聴く側を静かな集中へと導いていく。初期otomの姿勢が、最も素直な形で刻まれた作品です。お楽しみください。

『Voice Called from Within the Wall』はBandcampで配信中。高音質版の購入も可能です。