November Morning
- Sunday (3:34)
- Innocentage (4:23)
- Sound of the Snow (4:22)
- Thaw (5:07)
- Twenty-Four (3:54)
- Lees of Pain (7:59)
- More (3:25)
- Somewhere (4:01)
- Deep Clean (6:57)
- Halftone (4:38)
- Shadow (6:32)
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Lyrics
Sunday
Instrumental
Innocentage
変化しない したいような 見当違い でもないような 目を覚ます 夢のような 届く声が妙にこだまする まだ気のせいそんなような 届く声が妙にこだまする ※ 後年に日本語で書き直したバージョンのテキスト。
Sound of the Snow
あう云う言葉 あう云う仕草 もっとぐるぐる回れ 描いた形になるまで 降る言葉 降る仕草 もっとぐるぐる回れ 描いた形になるまで 生まれ行け ※ 後年に日本語で書き直したバージョンのテキスト。
Thaw
Instrumental
Twenty-Four
Fake, Classify, Egoism, Love, Under pressure, Issue, Distance, Find number 24.
Lees of Pain
Instrumental
More
Instrumental
Somewhere
まだ終わり切れない 未だ確かに焦がれてる 流れるような言葉をくれよ とうに醒めているならば ただくすぶるだけの灯りに 感じてしまうんだろ そこに戻れ 周りをみなよ とうに醒めているならば ※ 後年に日本語で書き直したバージョンのテキスト。
Deep Clean
※ 日本語で書き直したバージョンはいずれ。
Halftone
澄ました邂逅の果ての 今日のあなた 今のあなた 朝遊び疲れた 今日のあなた 昨日のあなた 消えてしまいそうに笑う 今日のあなた 明日のあなた 澄ました邂逅の果ての 今日のあなた 今のあなた ※ 後年に日本語で書き直したバージョンのテキスト。
Shadow
Instrumental
Intro
『November Morning』は、otomが2004年5月1日にリリースした1stアルバム。主に2001年から2004年にかけて制作された楽曲を収録し、後の作品へとつながる試行錯誤や実験的なアプローチが、すでに随所に刻まれている初期作品。 シューゲイズやドリーム・ポップ、エレクトロニカを軸にしながら、その音像は一様ではなく、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインやフライング・ソーサー・アタックを思わせる轟音的な揺らぎが顔を出すこともあれば、ポストロック以降の音響的な構築やエディット感覚、さらにはマイケル・ナイマンやサイモン&ガーファンクルを連想させる構築性やメロディ感が時として顔を出す。 美しく浮遊するサウンドと、明確な音楽的指向が共存するこのアルバムは、otomという音楽家の出発点を示すと同時に、その後の展開を予感させる一作となっている。
Note
本作『November Morning』に収録された楽曲群は、制作年代の異なる楽曲を起点としながらも、ひとつの流れと循環を持った作品として再構築されている。インストゥルメンタルと歌ものが交錯し、明確な起承転結やサビを持たない楽曲が多く並ぶ一方で、反復、ズレ、レイヤー、逆回転といった実験的手法が随所に用いられ、音は常に揺らぎ、変化し続ける状態として立ち現れている。 曲間はシームレスにつながり、季節や温度、時間帯の移ろいを思わせる感触が、アルバム全体を通奏低音のように貫いていく。冒頭の『Sunday』からラストの『Shadow』、そして再び冒頭へと回帰する構造は、個々の楽曲以上に「ひとつの作品」としてのまとまりを強く意識した結果でもある。 本作はまた、otomにとって制作環境と制作意識の大きな転換点となった作品でもある。それまで使用していたカセットMTRやハードディスク・レコーダーから、MacとMOTU社のDigital Performerを中心とした環境へと移行し、本作はその新たな制作環境で初めて完成させたアルバムとなった。同時に、明確な構想を持ち、曲順や流れを含めて一枚の作品として仕上げるという意識のもとで制作された、最初のアルバムでもある。そうした意味において『November Morning』は、otomの原点であると同時に、その後の作品群へと連なる方法論がはっきりと姿を現した、名実ともに1stアルバムと呼ぶべき一作となっている。
1. Sunday
『Sunday』は、アルバムのオープニングを飾るインストゥルメンタル曲。ロングトーンに加工されたベルの音や、リバースギターのループ、浮遊感のあるドローン・トーンのギターコードが静かに立ち上がり、楽曲は始まる。 フレーズを描くフルートやベルの音は左右に散りばめられ、やがてリバースされたピアノのフレーズと、そのハーモニーが次々とレイヤーされていく。途中、チェロのフレーズによる短いブレイクを挟み、ボイスループの後にさらに別のボイスループが重ねられることで音像はより奥行きを増し、その余韻を保ったまま楽曲は次の曲へとつながっていく。 こうした音の断片を重ね合わせていくコラージュ的なアプローチは、otom初期作品の特徴のひとつといえる。 また、本作のラストを飾る『Shadow』は、この『Sunday』の冒頭へと循環する構造を持っており、アルバム全体を象徴する仕掛けのひとつとなっている。
2. Innocentage
『Innocentage』は、前曲『Sunday』からシームレスにつながって始まる楽曲。フィードバック音が徐々に存在感を増し、アコースティック・ギターを中心としたメインフレーズが静かに立ち上がったのち、ドラムとベースが加わることで、一転してハイゲインな音像へと転じていく。 ファルセットとミックスされたボーカルは全体に抑制されたトーンで配置されているが、楽曲は緩急をつけながら進行し、シンプルなフレーズながら暴力的な質感を持つギターソロと、スネアワークが印象的なドラムパターンによってピークを迎える。 その後、再びアコースティック・ギターとフィードバックを中心とした冒頭の静かな音像へと回帰し、消え入りそうな歌の反復とともに楽曲は終わり、次の曲へとつながっていく。 初期otomの大きな特徴でもある、いわゆるAメロ的なフレーズのみを軸に楽曲全体を展開させる手法が、この曲でも用いられており、限られたコード進行の中でダイナミクスや音像の変化によって楽曲を成立させている。 タイトルの『Innocentage』は、innocent と age を組み合わせた造語で、本曲の性格を端的に示している。
3. Sound of the Snow
『Sound of the Snow』は、前曲のフィードバックの余韻からつながって始まる楽曲。リバース音を含んだアコースティック・ギターのストロークと、心音のようなキックとベースラインを軸にしたフレーズによって、静かに楽曲が立ち上がる。やがて三声のボーカルが加わるものの、ここでもコードを絞り込んだ展開手法が用いられており、明確なAメロやサビといった区分は設けられていない。左右に散らばるボーカルループやリバースギターのブレイクを経て、逆回転処理されたサウンドが積み重ねられることで、音場は次第に埋め尽くされていく。雪が積もるように音に満たされる中で、楽曲は自然な流れのまま次の曲へと接続される。 本曲は、2000年頃の雪がしんしんと降り積もる午後に書かれた楽曲。
4. Thaw
『Thaw』は、インストゥルメンタルによる楽曲。前曲『Sound of the Snow』で用いられたギターやボイスのフレーズの流れのままに、芽吹きを思わせるロータリースピーカーのかかったエレクトリック・ピアノの音色が重ねられていくところから始まる。 そこへ、反復されるベースのフレーズや、澄んだ響きを持つ新たなエレクトリック・ピアノの旋律、メロトロンのフレーズなどが加わり、音は少しずつ積み重なりながら音場を満たしていく。やがて、遠くからの呼び声のような『Sound of the Snow』のボイスループが再び姿を現し、楽曲は静かに温度を増していく。 冬の曲として始まった流れを受け継ぎつつ、春の雪解けを思わせる展開を描く一曲となっており、この『Sound of the Snow』から『Thaw』への流れは、otomのお気に入りの展開の一つでもある。
5. Twenty-Four
『Twenty-Four』は、前曲『Thaw』から間髪入れずに立ち上がり、それまでの流れとは明確にテンションが変化する楽曲。軽快なドラムフレーズと、シューゲイズ的なトーンを帯びたギターの反復を軸に、リズミカルな展開が描かれていく。リバース処理や浮遊感を伴った複数のエレクトリック・ピアノが重ねられる中で、ここでもAメロ的なフレーズのみで完結するボーカルメロディが繰り返され、楽曲はシンプルな構造のまま推進力を保ち続ける。終盤では、トレモロギターやスチールを叩いた音などが加わり、音場は次第に埋め尽くされていく。 本曲はもともと1998〜1999年頃に書かれた楽曲で、原曲『24』は力強いドラムループとエッジの効いたギターサウンドを特徴としている。otomの初期楽曲の中でもとりわけ早い段階で生まれた曲のひとつであり、原点を示す思い入れの深い作品でもある。その原型に先立つかたちで、本アルバムでは現在のアレンジによるバージョンが収録されている。 後年の2020年には、構成は原曲のままに再構築されたバージョンが、シングル作品としてリリースされた。
6. Lees of Pain
『Lees of Pain』は、冷ややかなピアノのアルペジオから始まるインストゥルメンタル曲。やがて、二つ目のピアノが加わり、さらに逆回転処理されたピアノや、CDがスキップするかのようなノイズ混じりのピアノが重なっていくことで、音像は次第に厚みを増していく。 そこへ、叩きつけるようなアクセントを持つピアノとギター、ノイズのループが加わり楽曲は新たな局面へと進行する。一定のテンポのもとで反復されるアルペジオは、トラックごとに異なる音数を内包しており、そのわずかな差異が積み重なることで、音は次第に噛み合わなくなり、独特のズレを伴った運動を描いていく。 やがて、そのズレが一瞬重なり合う一音をきっかけに情景は大きく転換し、フィールドレコーディングされた雨音と、遠くで鳴る新たなピアノのモチーフが姿を現す。メロトロンによるチェロの音色が切なく響き、コラージュされたようなサウンドが左右や奥行きに不均等なリズムを描きながら重ねられていく。 終盤では、再び叩きつけるようなアクセントのピアノとメロトロン、逆回転したピアノのみが残され、そのまま次の曲へと静かに接続されていく。 otom初期の実験精神が自由な形で発揮された一曲。
7. More
『More』は、オルガンとフロアタムを用いたドラムパターン、反復されるベースラインから始まるインストゥルメンタル曲。そこへ、スペーシーな質感を持つギターのメインフレーズが重なり、同時にRolandのテープエコーによるフィードバックノイズがリアルタイムで演奏されていくことで、音像は徐々にうねりを帯びていく。 やがて歪みを強くまとったリードシンセサイザーが絡み合い、楽曲は一時的に暴力性を孕んだ局面へと踏み込む。緩急を経たのち、再びギターやシンセが音場を埋め尽くすように重なり合い、その流れのまま次の曲へと接続されていく。 本曲は、1997〜1998年頃に書かれた楽曲で、otomの作品群の中でも最初期に位置づけられる一曲である。少ないコード数を前提とし、反復と音像の変化によって楽曲を展開させていくスタイルは、この時点ですでに明確に志向されており、後の作品へと連なる方法論の原型を見ることができる。
8. Somewhere
『Somewhere』は、レッド・ツェッペリンのジョン・ボーナムによる力強いドラムフレーズをサンプリングしたビートを土台に、シューゲイズ的な質感を持つギターサウンド、ベースライン、ボーカル、そして幾重にも重ねられたコーラスがレイヤーされていく楽曲。音は次第に厚みを増し、ウォール・オブ・サウンド的な密度を持った音像が形づくられていく。 ここでも、Aメロ的なフレーズのみで楽曲を完結させる志向は健在で、反復と音量感のコントロールによって楽曲全体の推進力が保たれている。 本曲のモチーフは古くから存在しており、1999年頃には、グリッチノイズ的なサウンド、ウォール・オブ・サウンドを志向したドローン、そして歌ものの要素を一体化させた三部構成の楽曲『Emotion』として完成していた。しかしこの楽曲は長らく未発表となり、その中からボーカルパートのみを抜き出すかたちで、本アルバムには『Somewhere』として収録されている。 その後、三部構成の『Emotion』は微調整を加えたうえで、otomのフェイバリットの一つでもあるEP『New Life』(2020)のラストトラックとして収録。本曲は複数の時代を横断するアイデアの一断面とも言える存在となっている。
9. Deep Clean
『Deep Clean』は、レスポールのハムバッカーによる太く澄んだクリーントーンに、エコーとリバーブをまとわせたギターのフレーズから静かに始まる楽曲。かすかなフィードバック音と、ベースとギターの中間のような低音フレーズ、逆回転処理されたハーモニクスのループが静かにリズムを刻む。遠くからの呼び声のようなボーカルが重なり、音像はゆっくりと立ち上がっていく。それらのフレーズの反復とギターのタッチを中心に演奏強度の変化が、楽曲全体を推進する。やがてチャーチオルガンやボーカルのハーモニーが重なり、残響音と演奏そのものが一体となって、音場は次第に満たされていく。陶酔感を伴いながら高揚していくその音像は、包み込むように広がり、昇天するかのような感覚を孕んでいる。 本曲は1stアルバムの直後にリリースされた1st EP『Highlife』において、すべての音をドライに再構成したインストゥルメンタル・バージョンも収録されており、同一楽曲の異なる側面を示す存在となっている。
10. Halftone
『Halftone』は、前曲『Deep Clean』の高揚感を引き継ぐかたちで、逆回転したギターサウンドと重いキックのリズムから始まる楽曲。三声からなるボーカルラインと、ひとまとまりのコードが反復される構成を軸に、時を刻むようなアコースティック・ギターのフレーズが重ねられていく。中盤ではメロトロンのフレーズが挿入され、一時的なブレイクを挟んだのち、音は終焉に向かって徐々に飽和していく。自身の心音を聴きながら宇宙空間を漂っているかのような感覚を喚起する、内省的かつ浮遊感の強い一曲。 本曲も『More』と同様に1998〜1999年頃という早い段階に作曲された楽曲で、リリースは本作のみに留まっている。構成や思想の面において、otomの中でも一、二を争うほど思い入れの深い作品。バンド編成での演奏では、跳ねるようなジャズ的要素を取り入れたドラムアレンジが好んで採用されている。
11. Shadow
『Shadow』はアルバムのラストを飾るインストゥルメンタル曲。前曲『Halftone』の余韻を引き継ぐように、エコーの効いたピアノのフレーズから静かに始まる。アンビエント感のある深い残響が音場を満たしたのち、心音を思わせるキックを軸に、オルガンやエレクトリック・ピアノ、ピアノの断片的なフレーズが、横切っては消え、消えては横切るように現れていく。 やがてベースのフレーズが加わり、さらにアルバム冒頭へと連なるリバースギターのループが重ねられることで、音像は徐々に厚みを増していく。全ての楽器が躍動し、音と音の隙間が埋め尽くされたのち、一音のベルによるロングトーンが静かに鳴り響き、楽曲は幕を閉じる。その響きはアルバムの始まりへと回帰するように、循環する構造を示している。
Outro
『November Morning』は、音の揺らぎや循環そのものをひとつの流れとして編み上げた作品。otomの制作姿勢がはじめて明確な形を取り、曲と曲の関係性やアルバム全体の流れを強く意識する現在の作風へとつながる、原点的な一作でもある。お楽しみください。
『November Morning』はBandcampで配信中。高音質版の購入も可能です。